2013年7月31日水曜日

2013「出発」

   
異界への旅は
ふと気づくと始まっていることもある
でもこうして
小さなオレンジ色のカヌーが
お迎えに来ることもあるのです
 
宙に浮かんで
私が乗り込むのを
じっと待っていてくれます
 
 

2013年7月23日火曜日

2013「Silver Towers II」

   
長い年月を経て
谷底は海となり
岩山は台地となっても
この光沢のある巨大なタワーは
昔と少しも変わらず
そこに立っているのである
 
 

2013年7月20日土曜日

2013「Under the Snowy Mountains」

   
雪積もる険しい山脈の
地底に通じる谷底に
静かに潜むもの
 
 

2013年7月18日木曜日

2013「Guiding Balls」



山の中を一人歩く道すがら
傍らに寄り添うように浮かんでいるのは
少し苔むした銀色のボールなのだった

まるで私の行く手を知っていて そこに導いてくれるかのように
あるいは先回りして 私を常に見張っているかのように
ボールは並んで
宙に浮いているのだった

山は生きている
そして歩いている私を見ている
そんな気がした 

2013「漂着物」

   
かつて海からこの海岸へと
流れ着いたのだろうと思われる 巨大な何か

得体の知れない物体ではあるけれど
年月を経て風景に馴染んできている

とは言っても
異様さは隠し様がないのだけれど
 
 

2013年7月14日日曜日

2013「It」

   
何かが始まるのでもなく
何かから身を潜めているのでもなく
「それ」はそこにいるのである
人気のない静かなその場所に
 キラキラと光を放ちながら
 音も立てずに
ただ浮いているのである
 

2013年7月11日木曜日

2013「共生」


軒下の陰に隠れるように
女性がいる

見える時と見えない時がある
見える人と見えない人がいる
どうやら彼女は壁から生えているようだ
この家の一部なのかもしれない
 
あるいは…
この家が
彼女の一部なのかもしれない
 
 

2013年7月10日水曜日

2013「黄泉路」


頭上を飛ぶ鷲に誘われるように
岩山の奥へ奥へと分け入ると
辺りは次第に暗くなり
右も左もわからなくなって
辿り着いたのがこの場所なのだった

すでにここは地上ではないのかもしれない
すでに私はもう生きていないのかもしれない
 
 

2013「Silver Towers」

   
あの場所には行ったことがある気がする
風と光を浴びて
ピアノブラックの鏡面仕上げのような
タワーの表面に手を置きながら
中央の球体を見上げたり
遠くの景色を見下ろしたり
したことがある…
気がする
 
 

2013年7月9日火曜日

2013「巣」


海上に突き出た奇妙な岩山か…
敵を威嚇する強固な要塞のようでもあるし
巨大な住居のようでもある…
 
でもその雑然とした感じは
「住居」というよりは「巣」みたいである
 
 

2013年7月4日木曜日

2013「記憶 海の匂い」


ふと気づけば
眼前に広がるのは海
聞こえるのは波の音
肌には風
真夏か?
懐かしい潮の香りがする